「アサーション」という言葉を聞いたことはありますか?
英語で「自己主張」を意味する言葉ですが、コミュニケーションにおいては、「相手の感情に配慮しながら自分の意見をしっかり述べる」という概念です。
例えば、職場でこのような経験をしたことはありませんか?
「会議で発言したいことがあったけど、つい遠慮してしまい手を挙げられなかった」「上司の無理な要求に逆らえず、つい言いなりになってしまった」「後輩や部下を叱れない、遠慮してしまい指摘できない」
人間関係を気にするあまり、自分の本音をつい押し殺してしまうという方は、実は非常に多いのです。
特に職場では、上下関係や利害関係があるため、「これを言って、嫌われたらどうしよう」「険悪な雰囲気になったらどうしよう」と気にしてしまって、言いたいことを我慢してしまうこともよくあるでしょう。
しかし、そういった我慢を続けたままでは気持ちよく仕事ができませんし、相手と円滑な人間関係を維持することも難しいですよね。
中には、つい転職を考えてしまう…という方もいるかもしれません。
そんなとき、あなたの強い味方になるのが、この「アサーション」という技術です。
アサーションを身につけると、言いづらいことを口に出したときに険悪な雰囲気になることを防げるだけでなく、円滑な人間関係を構築することもできるようになります。
この記事では、アサーションの効果を整理したうえで、その基本的なコツと使い方を、事例を通じて解説していきます。
どれも手軽にできるものばかりなので、ぜひ毎朝の通勤前にこの記事を読んで、頭の片隅におきながら仕事してみてくださいね。
きっと、職場の上司や同僚とコミュニケーションを楽にとれるようになっていくでしょう。
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目次
アサーションの効果と、コミュニケーションの種類
アサーションとは「相手の感情に配慮しながら自分の意見をしっかり述べるコミュニケーションスキル」であるとお伝えしました。
具体的に、どのようなものでしょうか。
実は、コミュニケーションのとり方には「①攻撃的なコミュニケーション」「②非主張的なコミュニケーション」「③アサーション」という3種類があります。
それぞれを比較しながら、アサーションの効果を理解しましょう。
①攻撃的なコミュニケーション
「攻撃的なコミュニケーション」とは、自分の意見をはっきりと伝えるものの、相手の言い分や気持ちを無視、もしくは軽視して、結果的に相手に自分の主張を押し付けてしまう言動を指します。
はっきりと伝えた結果、一時的な満足感を得られるものの、後味が悪くて公開してしまったり、相手から敬遠され孤立したりするという結果を招きやすいといわれています。
②非主張的なコミュニケーション
「非主張的なコミュニケーション」とは、自分の気持ちや考えを我慢して押し殺すことです。
表面上は相手に譲っていながらも、内心では不満や不快な気持ちを溜め込んでいるため、不満を覚えがちです。
我慢した結果、自分を責めて鬱になってしまったり、怒りが蓄積して攻撃的なコミュニケーションを取ってしまったりという結果を招く可能性があります。
このように、「攻撃的なコミュニケーション」「非主張的なコミュニケーション」は、いずれにしても自分に負担がかかるコミュニケーションになっています。
③アサーション
ここまでに見てきた2つに対し、「アサーション」は、自分の気持ちや考え、信念などを正直かつ率直に、その場にふさわしい方法で表現し、相手も同じように発言することを奨励します。
その結果として、互いの意見が異なっていることが判明します。
しかし、相手の感情に配慮しているため、感情的にさせることなく、双方にとって納得のいく結論を出そうとするのです。
その結果、言いづらいこともスムーズに言えるような、円滑な人間関係を構築できるようになります。
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アサーションのコツとは?
アサーションのコツ①:相手の発言に理解を示し、のっかる形で発言する
【アサーション例】会議で意見を言いたいとき
ある会議で、「A案にしたほうがいいと思います」という意見が出ました。
あなたはそれに対して「それよりもB案の方がいいのでは?」と考えています。
しかし、他の参加者も複数人が「いいね!」と支持しており、意見を言い出せる雰囲気ではありません。
こんなとき、あなただったらどうしますか?
NG例:攻撃的なコミュニケーション
「いや、むしろB案の方がいいと思います。なぜかというと…」ときっぱり言う
この例では、「なぜ相手はA案がいいと思ったのか」という理由に配慮しているという印象を与えないため、ただ自己主張をしているようにとらえられてしまいます。
既にお互いが気軽に本音を言い合えるような関係であれば良いものの、そうでない場合は、感情的で自己中心的な印象を与えてしまう恐れがあります。
会議の空気も、少し悪くなってしまうかもしれません。
NG例:非主張的なコミュニケーション
「そうですね、たしかにA案ですね(でも、やっぱりB案がいいんだけどな…)」
この例では、A案に内心反対しつつも、表面上は従っています。
もしこのままA案が通れば、あとから「私はA案に反対なんだよね」と愚痴をこぼしたくるでしょう。
また、他の誰かがB案を提案すれば、「私もそれを考えていたのに」と悔しい想いをするかもしれません。
いずれにせよ、波風を立ててこそいないものの、自分の中にストレスが溜まってしまう行動です。
OK例:アサーティブなコミュニケーション
「なるほど、確かに一理ありますね。そのうえで、○○の観点で考えると、B案も良いと感じますが、いかがでしょう?」
この例では、自分が発言する前に、まず相手に理解を示しています。
こうすると、相手は「自分の意見を受け止めてくれた」という印象をもちますので、空気が壊れることはありません。
さらに、否定語を使わず「そのうえで」という接続詞を使って、相手の意見にのっかかる形で自分の意見を述べています。
このようにすれば、相手も「否定された」と感情的にならず、冷静に聞いてくれることでしょう。
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アサーションのコツ②:事実を伝えた上で代替案を提案する
【アサーション例】上司から無理な要求をされたとき
定時の1時間前に「これ、急で悪いんだけど今日中にお願いしていい?」と上司から仕事を頼まれました。
どう頑張っても2時間はかかりそうな仕事なので、残業せざるをえません。
しかし、あなたはこのあと予定があるため、定時で帰りたいと思っています。
こんなとき、あなただったらどうしますか?
NG例:攻撃的なコミュニケーション
「このあと予定があるので、無理です!」と断る
この例では、仕事を頼んだ上司の事情や気持ちを無視して、きっぱりと断っています。
この場合、上司は「わかったよ、君には頼まないよ」と指示を取り下げる可能性が高いでしょう。
しかし、内心では「急だから仕方ないけど、言い方っていうものもあるんじゃない?もうこの人には頼みたくないな」と感じるかもしれません。
その結果、お互いに後味の悪さを感じてしまい、気まずい空気が流れかねません。
人間関係も、どこかぎこちなくなってしまうのではいないでしょうか。
NG例:非主張的なコミュニケーション
「はい…わかりました」と、そのまま引き受けてしまう
この例では、自分の都合もあるのにも関わらず、それを無視して引き受けています。
この場合、上司が悪感情をもつことはないでしょう。
しかし、自分自身はどうでしょう?
後から「なんで事情を言わなかったんだろう」と後悔し始めて、苦しくなるのではないでしょうか。
このように、自分の都合をないがしろにして抱え込むような自己犠牲が続くと、心身ともに疲弊してしまうので、避けたいものです。
OK例:アサーティブなコミュニケーション
「今日中の仕事ですね。引き受けたいのは山々なのですが、あいにくどうしても定時で帰らなければいけない用事があるので、今日だと半分までしか進めることができないと思います。明日の午前中までであれば全てできるかと思いますが、いかがでしょうか」
この例では、「今日だと半分までしか進めることができない」という事実をしっかり伝えたうえで、「明日の午前中までの期限でいかがでしょうか」と代替案を提案しています。
事実だけを伝えると、指示をした上司の感情を無視してしまいますが、代替案を提案することで上司に歩み寄ろうとする気持ちが伝わります。
その結果、上司も感情的になることなく、こちらの主張を受け止めてくれるようになるでしょう。
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アサーションのコツ③:相手に感謝をしながら「自分」を主語にして気持ちを述べる
【アサーション例】後輩・部下を指摘するとき
あなたは管理職です。
部下に資料作成を依頼したところ、あなたがイメージしている完成像とは全く異なる資料を提出されました。
その部下なりに一生懸命に取り組んだことは伝わってくるのですが、資料の誤りを指摘して修正を依頼する必要があります。
こんなとき、あなただったらどうしますか?
NG例:攻撃的なコミュニケーション
「この資料、作ってくれたところ申し訳ないんだけど、意図と違うから作り直して」
この例では、一生懸命資料を作った部下の気持ちに配慮している言葉を添えてはいるものの、相手を主語にしてこちらの主張をしています。
このような「(あなたが)作り直しなさい」という表現は命令形に聞こえてしまいます。
人間は他人からコントロールされることを嫌うため、自分の気持ちを命令形で伝えると、部下は内心反発してしまう可能性があります。
また、あなたに対して「また指摘されるのではないか」と恐れて、本音を言いづらいと感じてしまう恐れもあります。
いずれにしても、円滑な人間関係とは程遠い関係になりかねない伝え方です。
NG例:非主張的なコミュニケーション
「うん、ありがとう…(あとで私が直しておこう)」
この例では、部下の誤りを指摘せずに、自分で抱え込んで仕事を増やしてしまっています。このパターンは「部下に任せるよりも自分でやった方が速い」と感じる上司に多くみられます。
しかし、作った資料が意図と違うということを理解させなければ、部下は「この仕事の仕方でよい」と勘違いしたままになりますし、自分自身も仕事が増えたことで苦しくなります。
OK例:アサーティブなコミュニケーション
「作ってくれてありがとう!作ってくれたところ申し訳ないんだけど、私の意図と違うものだったから、もう一度作り直してもらえると助かるんだよね」
この例では、まず相手に感謝の気持ちを述べて、労っています。
そのうえで、「作り直してもらえると(私は)助かるんだよね」と、自分を主語にして気持ちを述べています。
このように自分を主語にして気持ちを述べると、いかがでしょうか。
単に自分の気持ちという事実を述べているだけなので、部下を責めるニュアンスがありません。
部下にしてみれば、命令されているわけではないので、行動を選択する余地が残されています。
そのまま資料を修正しなくてもいいし、修正してもいい、つまりどうするかは部下次第です。
しかし、「責任をしっかり果たそう」という気持ちがあるならば、部下は自発的に修正しようとしてくれるでしょう。
🎈 キャリアを積み重ねて接する相手が増えてくると、「コミュニケーションが以前より取りづらくなった」と感じるかもしれません。そんな方は、以下の記事もご覧ください。
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まとめ:アサーションを使って、円滑な人間関係を構築しよう
今回は、ビジネスコミュニケーションにおいて、相手と円滑な人間関係を構築するアサーションの技術を解説してきました。
相手に気を遣ってつい自分の意見を押し殺してしまいそうになるときは、攻撃的または非主張的なコミュニケーションではなく、アサーションを心がけましょう。
そのポイントは以下の3つです。
アサーションのコツ①:相手の発言に理解を示し、のっかる形で発言するアサーションのコツ②:事実を伝えたうえで代替案を提案するアサーションのコツ③:相手に感謝をしながら「自分」を主語にして気持ちを述べる
あなたが、アサーションを使いこなして、相手と円滑な人間関係を構築していけるよう応援しています!
🎈 コミュニケーション上手は、職場で一目おかれること間違いなし!
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